《説教題:隠蔽工作、そして、もう一つの知らせ》
《聖書:マタイによる福音書第28章1~20節/創世記第12章1~4節》
▼「いま、私は、古い、古い、手紙を、教えられた。
争う者らを和解させる、『新しい人』が来た、という手紙。
私は、胸のなかでたずねる、もう一度、『新しい人』は来るだろうか?
世界じゅうの子供たちが、それぞれの言葉で、答える。
---きっと来てくれる、心から信じるなら。
『新しい人』に、私は祈っている、来てください、あなたと働きたい私らの、いま、ここへ!」
小説家大江健三郎さんが、聖書の言葉にインスピレーションを得て、高校生の合唱コンクールのために記した詞、「『新しい人』に」の一節です。
▼聖書は、「新しい人」、イエス・キリストはすでに来た、と告げています。
そして、不思議なことに、イエス・キリストがやがて再び来る、とも告げます。
キリスト者たちは、その「新しい人」を待ち続けてきました。
「来てください、あなたと働きたい私らの、いま、ここへ!」と祈りながら。
▼教会は、「新しい人」へのあこがれを抱きつつ、2千年歩み続けてきました。
時には深いあやまちをおかしながら。時には自分たちが誰であるかを忘れながら。
それでも、この地に和解を、信仰を、希望を、愛を、もたらす「新しい人」になりたい。
それが、わたしたちの志です。
▼なぜ、わたしたちの社会はこのようになってしまったのでしょう。
なぜ、わたしたちの世界には悲しみが多いのでしょう。
なぜ、わたしたち自身、夢や希望をなくしてしまったのでしょう。
それでも、わたしたちは、「新しい人」を待ち続けます。
そして、イエス・キリストは、今も生きて、「新しい人」をつくり続けています。
「新しい人」を待つひとは、そのひと自身が「新しい人」に変えられていくのです。
神は、あなたを、「新しい人」につくりかえようとしておられます。
《プロフィール:平野克己(ひらのかつき)》
1962年3月、東京生まれ。
国際基督教大学を卒業後、東京神学大学大学院博士課程前期課程修了。アメリカのデューク大学客員研究員。
日本基督教団阿佐ヶ谷教会、金沢長町教会を経て、現在、東京都世田谷区にある代田教会牧師、同教会附属代田幼稚園園長。同時に説教塾全国委員会委員および雑誌『Ministry』編集主幹を務めている。
著書に、『主の祈り・イエスと歩む旅』(日本基督教団出版局、2005)、『いま、アメリカの説教学は』(キリスト新聞社、2006)など。訳書に、クラドック『権威なき者のごとく』(教文館、2002)、ウィリモン&ハワーワス『主の祈り』(日本基督教団出版局、2003)、ウィリモン『洗礼』(日本基督教団出版局、2006)など。また、キリスト教放送局FEBC(febcjp.com)で番組を担当している。
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